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東京地方裁判所 昭和60年(行ウ)101号 判決 1989年9月14日

東京都世田谷区成城二丁目二三番七号

原告

亀山孝一

東京都世田谷区若林四丁目二二番一四号

被告

世田谷税務署長

辻武保

東京都千代田区霞が関三丁目一番一号 中央合同庁舎四号館

被告

国税不服審判所長

杉山伸顕

被告両名訴訟代理人弁護士

和田衛

被告両名指定代理人

星野雅紀

安達繁

被告世田谷税務署長指定代理人

藤本宣之

小野雅也

被告国税不服審判所長指定代理人

八木幹雄

加藤広治

主文

一  原告が被告らに対し金五〇〇〇万円の支払を求める訴えを却下する。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告世田谷税務署長が昭和五七年八月三一日付けでした原告の昭和五四年分、昭和五五年分及び昭和五六年分の所得税の更正並びに過少申告加算税の賦課決定を取り消す。

2  被告国税不服審判所長が昭和六〇年四月二日付けでした前項の各更正及び過少申告加算税の賦課決定に対する裁決を取り消す。

3  被告らは、原告に対し、金五〇〇〇万円を支払え。

4  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  本案前の答弁

主文第一項と同旨。

2  本案の答弁

(一) 原告の請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  (課税処分等の経緯)

原告の昭和五四年、昭和五五年及び昭和五六年の各年分(以下「本件各年分」という。)の所得税に対する各課税処分等の経緯は、別表一の1記載のとおりである(以下、各更正を「本件更正」、各賦課決定を「本件賦課決定」、各更正及び各賦課決定を一括して「本件処分」、各裁決を「本件裁決」という。)。

2  (本件処分の違法事由)

(一) 被告世田谷税務署長(以下「被告税務署長」という。)は、原告に何ら予告することなく、昭和五七年六月二日午前八時三〇分ころ、原告が最も慌ただしい時間帯を狙って襲撃し、原告の承諾を得ることなく、また、原告の立会いを得ることなく、原告不在のまま勝手に診療棟に侵入し、既申告関係外の調査当日の伝票などの書類や歯科医師の守秘義務に係る診療関係書類という不可侵書類を渉猟したほか、原告の従業員に対し質問調査を行ったが、これは、基本的人権を侵害するものであり、違法である。

(二) 被告税務署長は、更正前に原告が更正の処分理由の開示を求めたにもかかわらず、理由を開示しなかったが、これは違法である。

(三) 被告税務署長は、原告に対し、更正を更正通知書により伝達したところ、当該更正通知書には処分理由の附記がないという違法がある。

(四) 被告税務署長は、原告が更正の理由の正当性を根拠づける証拠資料の開示を要求したのに対し、開示を拒否し、また、理由なき更正であることを暴露したが、これは違法である。

(五) 本件処分の基礎となった推計は、必要性・合理性がなく、違法である。

(六) 本件処分は、いずれも原告の所得を過大に認定したものであって違法である。

3  (本件裁決の違法事由)

(一) 前記のとおり、本件処分は、手続上も、また内容においても違法であるから、本件裁決もまた違法となる。

(二) 被告国税不服審判所長(以下「被告審判所長」という。)は、審査に当たり、原告・被告税務署長間では、必要経費につき、実額で算定すること及びその額自体に争いがないにもかかわらず、調査審査の範囲は必要経費の各支出項目の金額の適否に及ぶとし、更に事業所得の必要経費については推計による算定によるべきであるとして、本件裁決をしたが、これは、争点外事項について審査したもので、権限外のことであって、手続的保障原則に反し違法である。

4  (損害等)

原告は、昭和五七年六月二日から現在に至るまで、被告らが架空に捏造した収入(昭和五四年、昭和五五年及び昭和五六年の各年分合計で金四〇七一万八四七一円)に基づく更正によって、日夜心痛し、馴れない訴訟に明け暮れ、そのため経営上も多大の打撃を被っている。東京国税局及び世田谷税務署の恣意に基づく不正課税処分による精神的・物質的被害は甚大であり、到底金銭に換算しえないものであるが、金五〇〇〇万円が相当である。

5  よって、原告は、被告税務署長に対し、本件処分の取消し、被告審判所長に対し、本件裁決の取消しをそれぞれ求めるとともに、被告らに対し、金五〇〇〇万円の支払を求める。

二  被告らの本案前の主張

行政庁たる被告らは、損害賠償請求について当事者能力を有しないので、被告らに対し金員の支払を求める訴えは不適法であり、却下を免れない。

三  請求原因に対する認否・反論

1  請求原因1のうち、昭和五四年分、昭和五五年分及び昭和五六年分の確定申告、異議申立て及び審査請求の各税額は否認し、その余は認める。右各税額は、別表一の2記載の「納付すべき税額」欄のとおりである。

2  同2(一)のうち、被告税務署長が原告に調査の予告をしなかった事実、調査時において診療棟に原告が不在であった事実及び原告の従業員に対し質問調査を行った事実は認めるが、その余の事実は否認し、違法であるとの主張は争う。すなわち、まず、予告なしの抜き打ち調査であるから違法だというが、税務調査を行うに当たって、調査対象者に対する調査日時及び場所等の事前通知は、質問検査を行う上の法律上一律の要件とされているものではなく、調査を実施するに当たって、事前通知を行うかどうかは、税務職員の合理的な裁量に委ねられているものである。次に、原告は、既申告関係外の書類を検査したから違法だというが、質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解すべきであり、歴年終了前又は確定申告期間経過前といえども、質問検査が法律上許されないものではない。また、一般的に、税務調査にあっては、既に経過している年分(以下「過年分」という。)の調査を行う場合にも、単に当該過年分の帳簿書類を検査するばかりでなく、その調査の時点において現に記録されている帳簿書類を検査して、その記載内容と現況とを突き合わせることにより、当該納税者の帳簿書類の信憑性を判断するとか、帳簿書類の備付けのない場合に、現況から過年分の所得金額を推計するため、その手掛かりを求めたりすることは、税務調査の常道であり、そのような調査は適法である。原告は、歯科医師の守秘義務に係る診療関係書類を検査したことが違法であるというが、税務調査に必要とされる範囲の事項について歯科医師等の拒否特権は許されず、他面、税務調査に関係のない秘密には、質問検査権の行使は及びえないところ、原告のいう不可侵書類とは、歯科医師のカルテを指すものと推認されるが、一般的に、カルテは、治療内容や診療報酬金額等が記載された歯科医師にとっての原始記録であり、所得税法二三四条に規定する「事業に関する帳簿書類その他の物件」に該当することは明らかであるから、税務調査に必要とされる事項については、その提示を求め、その調査ができる。さらに、原告は、原告の従業員に対する質問調査は違法であるというが、税務職員の質問検査権行使の相手方は、納税義務者本人のみでなく、その業務に従事する従業員等も包合すると解されており、原告の従業員に対する質問調査は適法である。

3  同2(二)の事実は否認し、違法であるとの主張は争う。現行法上、更正前に当該更正についてその理由を説明する法律上の規定はない。

4  同2(三)につき、本件更正の更正通知書に更正の理由の附記がない事実は認めるが、違法であるとの主張は争う。所得税法上、所得税の更正の通知書に理由附記を要するとしているのは、青色申告に係る年分の総所得金額の更正をする場合に限られており(所得税法一五五条二項)、いわゆる白色申告者である原告に対する更正通知書に記載すべき事項は、国税通則法二八条二項に規定する事項に限られ、それ以外の更正理由を附記する必要はないのであるから、本件更正の更正通知書に理由の附記がなくとも何ら違法ではない。

5  同2(四)のうち、本件更正に係る証拠資料を原告に開示しなかった事実は認めるが、その余の事実は否認し、違法であるとの主張は争う。異議審理庁としての税務署長が更正の理由の正当性を根拠付ける証拠資料を開示しなければならないとする法律上の規定はない。

6  同2(五)及び(六)の事実は否認し、違法であるとの主張は争う。

7  同3(一)につき、本件裁決が違法であるとの主張は争う。

8  同3(二)のうち、被告審判所長が審査に当たり、調査審査の範囲は必要経費の各支出項目の金額の適否に及ぶとし、更に事業所得の必要経費については推計による算定によるべきであるとして、本件裁決をした事実は認めるが、その余の事実は否認し、違法であるとの主張は争う。

9  同4の事実は否認する。

四  被告らの主張

被告税務署長の主張は、次の1ないし2のとおりであり、被告審判所長の主張は、次の3のとおりである。

1  本件処分に係る調査等について

(一) 調査の必要性

(1) 原告は、東京都世田谷区成城二丁目二三番七号所在の自宅兼診療所(以下「本院」という。)及び埼玉県上福岡市北野一丁目三番所在の診療所(以下「分院」という。)において歯科医業を営んでいるところ、被告税務署長に対し、本件各年分の所得税につき、いわゆる白色申告をもって、前記のとおり、確定申告書を提出した。

(2) 被告税務署長は、右確定申告書を検討した結果、<1>原告は、本院及び分院にユニットを各三台有しているにもかかわらず、他の歯科医院に比し収入が過少で、かつ、所得率が極めて低調であったこと、<2>原告は、連年多額の資産を取得していること、<3>原告につき、不動産所得の申告漏れが見込まれたこと、という三つの理由により、原告の右各年分の所得税について調査を行う必要があると認めた。

(二) 課税処分に係る調査の経緯

(1) 被告税務署長は、原告の本件各年分の申告所得金額につき、東京国税局の職員(以下「局員」という。)の協力を得て、その上席調査官江苅内哲夫(以下「江苅内調査官」という。)に対し調査を命じた。江苅内調査官及び局員の綾部経一主査(以下「綾部主査」という。)と井関実査官は、昭和五七年六月二日午前八時三〇分ころ、調査のため原告の自宅に臨場し、原告に面接して、原告に対する調査を行う旨告げたところ、原告は、診療前に朝風呂に入る習慣であると述べ、江苅内調査官らを一時間ほど待たせた後、調査を実施することを了承し、自宅応接室において質問調査に応じた。また、局員の平井清満主査(以下「平井主査」という。)及び被告税務署長所部係官の桧森俊夫調査官(以下「桧森調査官」という。)と山口調査官は、同時刻に、原告の自宅に隣接する本院(一階は駐車場)に臨場し、綾部主査が原告から調査の了承を得るのを待ってその連絡を受けた後に、本院に勤務していた原告の従業員の大嶋昌子に対し質問調査を実施した。

(2) 綾部主査らが原告に対し、事業所得及び不動産所得に係る帳簿書類の提示を求めたところ、原告は帳簿を提示せず、事業所得に係る収支明細書作成の基となった原始記録として、本件各年分のカルテ(以下「本件カルテ」という。)綴り、領収書控綴り及び各支払を証する領収証の束を提示した。綾部主査らが、提示された本件カルテを調査し、内容を確認したところ、<1>本件カルテは、各年分毎に、また本院・分院毎に黒表紙綴りに綴られていること、<2>保険診療用カルテ及び自由診療用カルテの二種類のカルテ用紙が使用されていたが、いずれもその内容は、綺麗にペンで記載されていること、<3>本件カルテに記載されている自由診療に係る収入金額は、ほぼ申告額に一致していることの各事実が確認された

(3) 一方、本院で調査を行った平井主査らは、前記大嶋から、診療室のカウンターの下に保管されていた昭和五七年の使用中のカルテ(以下「使用中カルテ」という。)の提示を受けたので、平井主査が、そのカルテの一部を原告宅応接室に持って行き、綾部主査とともに、本件カルテと比較、照合したところ、使用中カルテにつき、<1>すべて保険診療用のカルテ用紙を使用していること、<2>保険診療収入及び自由診療収入の両方が鉛筆で雑然と書かれていること、<3>診療代金を入金したと思われるものには、「入」の、領収書を発行したと思われるものには、領の各表示が付してあることの各事実が認められた。

(4) 綾部主査及び平井主査は、本件カルテと使用中カルテとでは、明らかに書式、体裁が異なるため、本件カルテは、当初作成後に書き換えられたものと判断し、原告に対し、右書換えの理由を問いただすとともに、本件カルテにつき、書換前の原始カルテの提示を求めた。これに対し、原告は、原始カルテから本件カルテに書き換えたことは認め、その理由として、「事務員が保険請求をするとき、綺麗な方がわかりやすいので、書き換えている。」と述べたが、本件各年分の原始カルテは破棄したとして、これを提示することを拒否した。しかしながら、<1>昭和五七年一月から四月までの診療に係る部分は、調査時に既に保険請求が終わっているにもかかわらず、書き換えられていなかったこと、<2>原告の妻が昭和五七年五月分の保険請求をするのに、書換前の原始カルテを使用していたことからして、原告が述べた理由は、虚偽の申述であることが明らかであった。原告のほかにも数多くの歯科医師の調査を経験している綾部主査らは、カルテの書換えにより、自由診療収入の一部を除外する例が多いという過去の調査経験からしても原告の真実の収入金額を把握するためには、原告から本件各年分に係る原始カルテを提示してもらうほかないと判断し、原告に対し、繰り返し右原始カルテの提示を求めたが、原告は、結局、提示しなかった。この間、綾部主査らは、原告に対し、本件各年分の自由診療収入を除外しているのではないかと問いただしたが、原告は、激昂して「何を根拠にそんなことをいう。」と大声を出し、調査は度々中断した。

(5) また、桧森調査官及び山口調査官は、各自分担して、本件カルテ及び使用中カルテの内容を書き抜く作業を実施した。そして、使用中カルテに係る自由診療収入金額を集計したところ、昭和五七年一月から五月までの五か月間で、金九八三万三七五〇円となることが確認された。一方、原告の提出した昭和五六年分の確定申告書の収支明細書に記載されていた一年間の自由診療収入の金額は、右五か月間の金額より若干多い金一〇九八万五一七三円であり、明らかに過少であると認められた。

(6) 局員の小松隆就実査官(以下「小松実査官」という。)及び被告税務署長所部係官二名は、昭和五七年六月三日午前九時ころ、分院に臨場し、原告の立会いのもとに分院の調査を実施したが、調査開始後に、平井主査及び桧森調査官もこれに加わった。そして、診療室内の棚の中やその他の場所から本件各年分に係る鉛筆書きのカルテ、すなわち、いわゆる原始カルテの一部が発見された。この原始カルテの内容と、前日、本院で確認した本件カルテの内容とを照合したところ、原始カルテに係るものは本件カルテの中にはなかったので、分院で発見された原始カルテに係る自由診療収入は申告漏れになっていることが確認され、その額は、昭和五四年から昭和五六年までの三年間で約一四五万円であった。

(7) さらに、昭和五六年分の本件カルテから把握された自由診療収入のうち、ポーセレンによる治療本数は、七六本と計算されたところ、これは同年中における原告とその歯科技工の取引先である有限会社しん山セラミックデンタルラボラトリー(以下「しん山セラミック」という。)との取引金額一五九万円から推認される同会社の原告に対する納品数約一三二本に比し、明らかに過少であり、申告額以上の収入金額の存在が推認された。

(8) 江苅内調査官は、昭和五七年六月二三日、原告に対し、原告宅において、同日までの調査結果を説明するとともに、前項のポーセレンによる治療本数の相違につき、説明をもとめたが、明確な回答が得られなかった。

(9) 以上の事実に加えて、<1>原告には、本件各年分の収入金額及び必要経費に関する帳簿書類等の備付けがないこと、<2>前記のとおり分院で把握した原始カルテも原告の収入金額を実額で把握するには程遠い断片的なものであること、<3>原告は、不特定多数の患者を相手とする歯科医業を営んでいるため、反面調査等によって収入額を実額で把握することが極めて困難であること、<4>他に実額計算をなしうる調査の手段ないし方法がないことから、被告税務署長は、原告の本件各年分の事業所得の金額を実額で計算することは不可能であって、推計により計算せざるを得ないと判断し、調査により把握できた昭和五七年一月から五月までの自由診療収入金額と予約簿からの来患人員を基準として本件各年分の自由診療収入金額を推計により算出し、これを基に本件課税処分を行った。

(三) 異議申立てに係る調査の経緯

(1) 原告が、被告税務署長に対し、昭和五七年一〇月五日、本件課税処分を不服として異議申立てをしたので、被告税務署長は、所部係官の米村泰浩(以下「米村係官」という。)に対し、右異議申立てに係る調査審理を命じた。

(2) 米村係官は、昭和五七年一〇月二八日に関与税理士服部徹義に連絡し、同年一一月八日、九日、一〇日、二四日、二七日、一二月四日、二四日及び二八日の計八日間にわたって、原告の自宅及び分院に臨場して調査を行い、原告から、<1>原告は、診療時に、鉛筆書きの原告カルテを作成し、その日のうちに、原始カルテを基に保険診療カルテ及び自費診療カルテを作成し当該原始カルテは破棄していること、<2>異議申立書で売上漏れと自認している金額は、調査後分院から出てきたカルテにより把握したこと等の内容を聴取した。

(3) 被告税務署長は、米村係官からの報告に基づき、原告から帳簿書類及び本件カルテ作成に係る原始カルテが提出される可能性はなく、原告の収入金額を実額により計算することができないので、これを推計により計算せざるを得ないと判断し、原告の昭和五七年一月から五月までの総収入金額に占める自由診療金額の割合を基に本件各年分の所得金額を算出したうえ、本件課税処分の内容を再検討し、昭和五八年一月二五日、原告の異議申立てを一部認容し、本件課税処分を一部取り消す異議決定を行った。

2  本件処分に係る課税の根拠及び適法性について

(一) 本件処分に係る推計の必要性及び合理性

(1) 推計の必要性

本件処分に係る調査の経緯等及び推計の必要性については、前記1の(二)において詳細に述べたとおりである。

なお、付言すれば、本件調査当時、原告から綾部主査らに提示された黒表紙綴りの本件カルテは、保険診療カルテ及び自由診療カルテが渾然と一緒に綴られており、それらのカルテは、すべてペン書きであり、他方、使用中カルテは、すべて鉛筆書きであったところ、原告の提出に係る甲第四七号証のカルテ綴りの写真では、カルテの記載状況が全く不明であるが、仮に、同号証による自由診療カルテが鉛筆書きであるならば、原告は、調査終了後に本件各年分の自由診療分のペン書きカルテを鉛筆書きに再度書き直したものと考えられる。すなわち、調査当時、自由診療カルテは、黒表紙綴りとは別個に綴られていなかったのであるから、甲第四七号証による自由診療カルテには黒表紙に綴るための穴が開いていなければならないが、同号証の写真による自由診療カルテ綴りには、クリップの跡は認められるものの、黒表紙に綴るための穴は見受けられない。原告が原始カルテをペン書きの自由診療カルテに書き換えた後、再度、鉛筆書きの自由診療カルテに書き直して細工したとしか考えられない。

(2) 推計の合理性

被告税務署長が、原告の総収入金額を算出するために本訴において主張する推計方法は、原告の売上原価及び外注費(歯科技工科)の合計金額(以下「外注等経費」という。)を、原告の納税地を管轄する世田谷税務署の管内に事業所を有する者及び分院を管轄する川越税務署管内に事業所を有する者で、原告と同様「歯科医師」のうち、次の<1>ないし<5>に該当する者(以下「比準同業者」という。)の外注等経費金額の割合(以下「外注等経費率」という。)の平均値で除して算出するという方法である。

<1> 昭和五四年分ないし同五六年分において、青色申告の承認を受け、青色決算書を提出している者

<2> 昭和五四年分ないし同五六年分の各年分の保険診療に係る収入金額及び外注等経費の金額のいずれもが、原告の当該金額の半分以上二倍以下の範囲内である者

<3> 年を通じて歯科医師の事業を継続している者

<4> 災害等により経営状態が異常であると認められる者以外の者

<5> 税務署長から更正又は決定処分を受けている者にあっては、国税通則法又は行政事件訴訟法の規定による不服申立期間及び出訴期間の経過している者並びに当該処分に対する不服申立て及び訴訟中でない者

ところで、右比準同業者は、前記の条件を満たすものの全員を漏れなく抽出したものであって、そこには恣意が介在する余地は全くなく、原告と業種及び事業規模等が類似しているものであるから、比準同業者の平均外注等経費率を適用して原告の総収入金額を算出する方法には合理性がある。

(二) 昭和五四年分所得金額の計算根拠及び適法性

原告提出に係る確定申告書との対比は、別表二の1記載のとおりである。

(1) 事業所得の金額 一九七三万八九六六円

右金額の内訳は、別表三の1記載のとおりであって、売上原価及び必要経費について、被告税務署長が、加算、減算した内容は、次のとおりである。

<1> 総収入金額 四六二六万七五二九円

右金額は、原告の申告に係る外注等経費八五七万八〇〇〇円を、比準同業者の昭和五四年の外注等経費率の平均値一八・五四パーセント(別表四の1)で除して算出した金額である。

(算式)

(外注等経費) (外注等経費率) (総収入金額)

八五七万八〇〇〇円÷〇・一八五四=四六二六万七五二九円

<2> 売上原価 三八八万一四〇〇円

原告の収支明細書に記載された売上原価(仕入金額)の額八五七万八〇〇〇円の内訳は、別表五記載のとおりであるところ、同表記載<2>の技工料は、一般には、売上原価とは区別され、外注費の項目に分類されるものであるから、この技工料の額四六九万六六〇〇円を売上原価の類から減算した。

<3> 水道光熱費 四五万五五一八円

原告の収支明細書に記載された水道光熱費の額一四五万八一三三円の内訳は、別表六記載のとおりであって、本院及び分院の電気・ガス・水道の使用に係る料金の各支払額である。しかしながら、右各料金のうち、本院に係る料金には、住宅での使用に係る家事使用分が含まれているにもかかわらず、原告は、確定申告において、本院に係る各料金について事業分と家事使用分とを区別せずに、その全額を必要経費に算入していた。ところで、原告の経営する歯科医院は、歯科医師は原告のみであり、原告は、一週間のうち、月曜日、火曜日、木曜日及び金曜日、の四日間は分院で診療を行い、水曜日及び土曜日の二日間のみ本院で診療を行っていたものであり、一方の診療日には、他方は休診していた。また、昭和五四年分の社会保険診療報酬支払基金の支払金額によれば、分院に係る原告の収入金額が、三八五万三八六一円であるのに対し、本院に係る収入金額は、三三万八八九〇円であった。このように、診療日数及び診療の対価のいずれについても、分院の方が本院を大幅に上回っていることから考えて、本院に係る水道光熱費は、分院に係る水道光熱費を上回るものとは考えられない。そこで、本院に係る水道光熱費のうち、分院に係る水道光熱費の額を超える部分の一〇〇万二六一五円を家事使用分に係るものと計算し、これは事実上の必要経費には当たらないので、減算した。

<4> 旅費通信費 三三万九四〇〇円

原告の収支明細書に記載された旅費通信費の額六〇万一七四〇円は、本院及び分院の電話料金並びに交通費等であって、その内訳は別表七記載のとおりであるが、このうち、本院に係る電話料金については、家事使用分が含まれているにもかかわらず、原告は、確定申告において、本院に係る右電話料金について、事業分と家事使用分とを区別せず、右電話料金の全額を必要経費に算入していた。ところで、原告の経営する歯科医院については前項<3>で述べた事情が存するため、電話料金についても、本院に係る料金のうち、分院に係る料金を超える部分の額二六万二三四〇円を、家事使用分に係るものと計算し、これは事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<5> 接待交際費 二六万八二三五円

原告の収支明細書に記載された接待交際費三四万二六二八円のうち、別表八記載の支出七万四三九三円は、個人の遊興又は個人生活上の接待等に係る支出と認められ、これは、事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<6> 書籍代 八万七一〇〇円

原告の収支明細書に記載された書籍代一七万一一〇〇円のうち、「原色版国宝」全一二巻の購入代金八万四〇〇〇円は、家事上の支出と認められ、事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<7> 雑費 九一万〇七三一円

原告の収支明細書に記載された雑費一七五万四五九三円のうち、別表九の1記載の支出計八四万三八六二円は、いずれも個人の生活上の支出に係るものと認められ、事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<8> 給料賃金 四七二万四〇〇〇円

原告は、収支明細書の給料賃金欄に記載された二四四万八〇〇〇円の外に、簿外で、宮本暢子外七名に対し、二二七万六〇〇〇円の給与を支給していたから、同金額を給料賃金として加算した。

<9> 利子割引料 一八三万五一一四円

原告の収支明細書に記載された借入金に係る支払利子二五一万四五〇〇円のうち、まず、別表一〇記載の借入金中<1>の一五〇〇万円及び<2>の一〇〇〇万円のうち八〇〇万円は、本院の敷地の取得及び建物の建築費に充てられているが、本院は、原告の住宅兼診療所であるから、本院の敷地の取得及び本院の建築費に充てられた右二三〇〇万円のうち、床面積比率による計算上、住宅部分に対応する支払利子六一万〇三二六円は、家事関連費となるもので、事業上の必要経費には当たらないから減算した。次に、不動産取得の基因となる資産である東京都新宿区西新宿六丁目所在のストーク新宿九〇二号室の取得に充てられた同表<3>の借入金七〇〇万円のうち一四〇万円に対応する支払利子は、不動産取得の金額の計算上、必要経費となるものであって、事業取得の必要経費には当たらないから減算した。

<10> 地代家賃 二四万七八二二円

原告の収支明細書に記載された地代家賃の額五六万四〇〇〇円は、本院の敷地に係る支払地代の全額であるが、本院は、原告の住宅兼診療所であるから、別表一一記載のとおり、そのうち住宅部分に相当する家事関連費の額三一万六一七八円は、事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<11> 減価償却費(建物) 三一七万一五七〇円

原告の収支明細書の「減価償却費の内訳」に記載がある資産のうち、千葉県千葉市花園町二番八号所在の建物(貸診療所)は、不動産所得の基因となる資産であるから、その減価償却額三〇万八二九〇円は、事業所得の必要経費には当たらないため減算した。

<12> 外注(技工)費 四六九万六六〇〇円

前記<2>項において減算した別表五記載の外注費の額である。

<13> 返還金(雑損) 一〇〇万円

原告は、昭和五三年一〇月ころ、大島孝子に対し歯科治療を施し、同月一三日に治療代金として一三〇万円を受領したものの、その後、同人から治療後の不調を理由に代金の返還を求められ、昭和五四年四月一三日に一〇〇万円を返還したので、同返還金一〇〇万円を事業上の雑損として加算した。

(2) 不動産所得の金額 二三九万五二二二円

右金額の内訳は、別表一二の1記載のとおりであって、収入金額及び必要経費の額につき、被告税務署長が、加算、減算した内容は、次のとおりである。

<1> 家賃収入 一八七六万四九六四円

原告は、東京都渋谷区神宮前二丁目三〇番一四号所在のパレドール原宿三〇六号室(以下「パレドール原宿」という。)を昭和五三年一二月一四日に井上工業株式会社から購入し、貸家の用に供する予定であったが、しばらくの間、賃借人があらわれなかったため、、パレドール原宿の販売提携業者である日帝総業株式会社から、家賃相当額の保証として、昭和五四年三月一七日及び同年四月二日に各一六万九〇〇〇円の計三三万八〇〇〇円を受け取ったので、これを家賃収入に加算した。

<2> 損害保険料 六〇万五一五四円

原告の収支明細書に記載された損害保険料九〇万七三七〇円のうちには、別表一三記載ロの払込保険料の全額三一万七〇七〇円が計上されているが、長期の損害保険契約に係る支払保険料で一括支払したものについては、期間の経過に応じて、当該業務に係る所得金額の計算上、必要経費に算入すべきであるから、同表記載ニの前払費用となる保険料三〇万一六六〇円及び昭和五三年分の保険料となる五五六円の計三〇万二二一六円は、昭和五四年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費には当たらないので減算した。

<3> 利子割引料 五五九万三四五三円

前記(1)の<9>において、事業所得の必要経費の計算上、利子割引料から除外したストーク新宿九〇二号室の取得費に充てられた借入金一四〇万円に対応する利子六万九〇六〇円を不動産所得の必要経費として加算した。

<4> 減価償却費 八三〇万三〇一八円

原告の収支明細書に記載された減価償却費に額には、次のとおり誤りがある。

(a) 集計誤りの減算について

別表一四の1記載の「減価償却費の内訳」のとおり、原告は、確定申告時の減価償却費の計算において、減価償却費の合計が八六八万二五二四円であるところ、右計算を誤って、八七八万四一四四円と収支明細書の減価償却費の欄に記載していた。このため、一〇万一六二〇円が過大に計上されていたので、これを減算した。

(b) マンションに係る過大計上額について

原告は、別表一五記載の<1>のニューステートメナー一一三四号室、<2>のパレドール原宿三〇六号室及び<3>のストーク新宿九〇二号室に係る減価償却費の計算の際、その計算の基礎となる取得価額につき、土地の価額と建物の価額とに区分することなく、その購入価額の全額を建物の取得価額として減価償却費の計算をしていた。ところが、いわゆる分譲マンションのように購入価額が建物の価額と土地の価額の双方を含む場合、減価償却費の計算に当たっては、減価償却資産とされる建物の取得価額と減価償却資産とされない土地の取得価額との区分をし、建物の取得価額とされた価額を基にして当該建物の減価償却費を計算することとされている。そこで、別表一五記載のとおり、建物の取得価額を求め、右取得価額によって、別表一六のとおり、減価償却費の額を計算したところ、六八万七七九六円が減価償却超過額と算定されたので、これを減算した。

(c) 貸診療所に係る加算額について

前記(1)の<11>において、事業取得の計算上必要経費から除外した貸診療所に係る減価償却費の額三〇万八二九〇円を不動産所得の必要経費として加算した。

(三) 昭和五五年分所得金額の計算根拠及び適法性

原告提出に係る確定申告書との対比は、別表二の2記載のとおりである。

(1) 事業所得の金額 一八七四万二九七三円

右金額の内訳は別表三の2記載のとおりであって、売上原価及び必要経費について、被告税務署長が、加算、減算した内容は、次のとおりである。

<1> 総収入金額 四五九四万五〇四一円

右金額は、原告の申告に係る外注等経費の金額九三一万三〇六〇円を、比準同業者の外注等経費率の平均値二〇・二七パーセント(別表四の2)で除して算出した金額である。

(算式)

(外注等経費) (外注等経費率) (総収入金額)

九三一万三〇六〇円÷〇・二〇二七=四五九四万五〇四一円

<2> 売上原価 五二九万六八一〇円

原告の収支明細書に記載された売上原価(仕入金額)の額九三一万三〇六〇円のうち、別表五記載の<2>の技工料の額四〇一万六二五〇円を、昭和五四年分と同様の理由で、売上原価の額から減算した。

<3> 水道光熱費 五六万〇四二八円

原告の収支明細書に記載された水道光熱費の額一七六万四八七六円のうち、別表六記載のへの家事使用分一二〇万四四四八円は、昭和五四年分と同様の理由によって、事業上の必要経費に当たらないので減算した。

<4> 旅費通信費 七二万一五二八円

原告の収支明細書に記載された旅費通信費の額九六万二八五三円のうち、別表七記載のへの家事使用分は、昭和五四年分と同様の理由によって、事業上の必要経費に当たらないので減算した。

<5> 接待交際費 一七万九一五九円

原告の収支明細書に記載された接待交際費の額五三万〇四九九円のうち、別表八記載の三五万一三四〇円は、昭和五四年分と同様の理由によって、事業上の必要経費に当たらないので減算した。

<6> 雑費 八四万一〇七四円

原告の収支明細書に記載された雑費の額一〇〇万七四一四円のうち、別表九の2記載の一六万六三四〇円は、昭和五四年分と同様の理由によって、事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<7> 給料賃金 五三〇万円

原告は、収支明細書の給料賃金欄に記載された三八六万円の外に、簿外で、宮本暢子に対し、一四四万円の給与を支給していたから、同金額を給料賃金として加算した。

<8> 利子割引料 一八四万七八八二円

原告の収支明細書に記載された借入金に係る支払利子二三七万二二二二円のうち、まず、別表一〇記載の<2>のリの四四万〇四九一円は、昭和五四年分と同様の理由によって、家事関連費となるものであり、事業上の必要経費には当たらないので、減算した。また、同表記載の<3>のリの八万三八四九円は、昭和五四年分と同様の理由によって、不動産所得の必要経費となるものであり、事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<9> 地代家賃 二四万七八二二円

原告の収支明細書に記載された地代家賃の額五六万四〇〇〇円のうち、別表一一記載の<3>の三一万六一七八円は、昭和五四年分と同様の理由によって、事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<10> 減価償却費(建物) 二八五万七五八四円

原告の収支明細書の「減価償却費の内訳」に記載がある資産のうち、別表一四の2記載の<9>の建物は、千葉県千葉市花園町所在の貸診療所であり、その減価償却費二七万七七七五円は、不動産所得に係る必要経費となるものであるところ、原告は、右減価償却費を、事業所得及び不動産所得の双方からそれぞれ必要経費として二重に控除していたので減算した。

<11> 外注(技工)費 四〇一万六二五〇円

前記<2>において減算した別表五記載の外注費の額である。

(2) 不動産所得の金額 六八八万八九七一円

右金額の内訳は、別表一二の2記載のとおりであり、収入金額及び必要経費の額につき、被告税務署長が、加算、減算した内容は、次のとおりである。

<1> 損害保険料 二七万九〇三四円

長期の損害保険契約に係る別表一三記載の昭和五四年分の前払費用となっている保険料のうち、昭和五五年分の保険料となる同表記載のへの一万六五二一円を必要経費として加算した。

<2> 利子割引料 六〇八万七五五一円

前記(1)の<8>において、事業所得の必要経費の計算上、利子割引料から除外した額のうち、別表一〇記載の<3>のリの八万三八四九円は、昭和五四年分と同様の理由によって、不動産所得の必要経費として加算した。

<3> 減価償却費 六三七万六一九二円

原告の収支明細書に記載された減価償却費の額七一九万三九五四円のうち、ストーク新宿等のマンションに係る減価償却費の額は、昭和五四年分と同様の理由によって、別表一五及び同一六記載のとおり、減価償却の額を算定したところ、八一万七七六二円が減価償却超過額と算定されたので、これを減算した。

(四) 昭和五六年分所得金額の計算根拠及び適法性

原告提出に係る確定申告書との対比は、別表二の3記載のとおりである。

(1) 事業所得の金額 六四四万三四〇五円

右金額の内訳は、別表三の3記載のとおりであって、売上原価及び必要経費について、被告税務署長が、加算、減算した内容は、次のとおりである。

<1> 総収入金額 二六六八万七七一九円

右金額は、原告の申告に係る外注等経費の金額五三二万四二〇〇円を、比準同業者の外注等経費率の平均値一九・九五パーセント(別表四の3)で除して算出した金額である。

(算式)

(外注等経費) (外注等経費率) (総収入金額)

五三二万四二〇〇円÷〇・一九九五=二六六八万七七一九円

<2> 売上原価 二五六万八三〇〇円

原告の収支明細書に記載された売上原価(仕入金額)の額五三二万四二〇〇円のうち、別表五記載の<2>の技工料の額二七五万五九〇〇円を、昭和五四年分と同様の理由で、売上原価の額から減算した。

<3> 水道光熱費 六六万五一四〇円

原告の収支明細書に記載された水道光熱費の額二二四万一四五四円のうち、別表六記載のリの家事使用分一五七万六三一四円は、昭和五四年分と同様の理由によって、事業上の必要経費に当たらないので減算した。

<4> 旅費通信費 五四万一八〇四円

原告の収支明細書に記載された旅費通信費の額八一万二六五四円のうち、別表七記載のリの家事使用分二七万〇八五〇円は、昭和五四年分と同様の理由によって、事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<5> 接待交際費 八三万八八五七円

原告の収支明細書に記載された接待交際費の額一〇五万八七六四円のうち、別表八記載の二一万九九〇七円は、昭和五四年分と同様の理由によって、事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<6> 雑費 四九万五七四四円

原告の収支明細書に記載された雑費の額一四二万五〇一三円のうち、別表九の3記載の支出合計九二万九二六九円は、昭和五四年分と同様の理由によって、事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<7> 給料賃金 三六一万二〇〇〇円

原告は、収支明細書の給料賃金欄に記載された二〇一万二〇〇〇円の外に、簿外で、宮本暢子に対し、一六〇万円の給与を支給していたから、同金額を給料賃金として加算した。

<8> 利子割引料 一五八万七〇三七円

原告の収支明細書に記載された借入金に係る支払利子二〇八万〇六六八円のうち、まず、別表一〇記載の<2>のルの四〇万三六三一円は、昭和五四年分と同様の理由によって、家事関連費となるものであり、事業上の必要経費には当たらないので減算した。また、同表記載の<3>のルの九万円は、昭和五四年分と同様の理由によって、不動産所得の必要経費となるものであり、事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<9> 地代家賃 二四万七八二二円

原告の収支明細書に記載された地代家賃の額五六万四〇〇〇円のうち、別表一一記載の<3>の三一万六一七八円は、昭和五四年分と同様の理由によって、事業上の必要経費には当たらないので減算した。

<10> 減価償却費(建物) 二五七万四六八四円

原告の収支明細書の「減価償却費の内訳」に記載がある資産のうち、別表一四の3記載の<9>の建物は、千葉県千葉市花園町所在の貸診療所であり、その減価償却費二五万〇二七五円は、不動産所得に係る必要経費となるものであるところ、原告は、右減価償却費を、事業所得及び不動産所得の双方からそれぞれ必要経費として二重に控除していたので減算した。

<11> 外注(技工)費 二七五万五九〇〇円

前記<2>において減算した別表五記載の外注費の額である。

(2) 不動産所得の金額 一一五七万一三四八円

右金額の内訳は、別表一二の3記載のとおりであり、収入金額及び必要経費の額につき、被告税務署長が、加算、減算した内容は、次のとおりである。

<1> 損害保険料 二六万八〇九七円

長期の損害保険契約に係る別表一三記載の昭和五四年分の前払費用となっている保険料のうち、昭和五六年分の保険料となる同表記載のトの一万六五二一円を必要経費として加算した。

<2> 利子割引料 四七三万二四八〇円

原告の収支明細書に記載された借入金利子の額五六四万〇六〇七円のうち、以下の差引計九〇万八一二七円を減算した。

(a) 集計誤りについて

原告の収支明細書に記載された借入金利子の額五六四万〇六〇七円のうち、二五万一五七六円は、原告が右借入金利子を集計する際に、計算誤りをした額であるので、これを減算した。

(b) 家事関連費の減算について

原告の収支明細書には、パレドール原宿三〇六号室賃貸料収入について、昭和五六年九月以降、その記載がなく、同室には、同年一〇月一五日から昭和五八年二月一六日までの間、島津忠範・島津彌生(原告の長女)夫妻が居住していたことから、右パレドール原宿は、昭和五六年九月以降、不動産貸付に係る業務の用に供されていたものとは認められない。したがって、右パレドール原宿の取得に係る借入金利子のうち、島津夫妻が居住していた期間に対応する金額七四万六五五一円(百十四銀行新宿支店につき、四七万六五七九円、住宅ローンサービスにつき、二六円九九七二円)は、家事関連費として、不動産所得の計算上、必要経費には当たらないので、これを減算した。

(c) ストーク新宿に係る加算額について

前記(1)の<10>において、事業所得の必要経費の計算上、利子割引料から除外した額のうち、別表一〇記載の<3>のルの九万円は、昭和五四年分と同様の理由によって、不動産所得の必要経費として加算した。

<3> 減価償却費 五二五万八九一六円

原告の収支明細書に記載された減価償却費の額六三一万七〇三六円のうち、ストーク新宿等のマンションに係る減価償却費の額は、昭和五四年分と同様の理由によって、また、パレドール原宿に関しては、<2>の(b)において述べたとおり、家事関連費分が算入されているため、別表一五及び同一六記載のとおり、減価償却の額を算定したところ、一〇五万八一二〇円が減価償却超過額と算定されたので、これを減算した。

<4> その他の経費 一四三万一八六九円

原告の収支明細書に記載されたその他の経費一五〇万九九四九円のうち、パレドール原宿に係る管理料の額二三万四二四〇円は、前記<2>の(b)において述べた理由により、家事関連費の額七万八〇八〇円を含んでおり、これは不動産所得の計算上、必要経費には当たらないので減算した。

(五) 本件処分の適法性

(1) 本件更正

被告税務署長が本訴において主張する原告の本件各年分の総所得金額は、前記(二)ないし(四)のとおり、

昭和五四年分 二二一三万四一八八円

昭和五五年分 二五六三万一九四四円

昭和五六年分 一八〇一万四七五三円

であるところ、被告税務署長が本件更正において認定した原告の総所得金額は、それぞれ、

昭和五四年分 一〇六三万六〇五五円

昭和五五年分 八二四万四七四三円

昭和五六年分 一六〇一万〇二三〇円

であって、いずれも、本訴における被告主張の前記総所得金額の範囲内であるから、本件更正は、いずれも適法である。

(2) 本件賦課決定

原告は、本件各年分の所得金額を過少に申告していたため、本件更正により納付すべき所得税の額(異議決定及び裁決により一部減額後のもの)は、

昭和五四年分 二三九万〇九〇〇円

昭和五五年分 八六万二七〇〇円

昭和五六年分 四三五万二四〇〇円

となり、被告は、国税通則法(昭和五九年法律第五号による改正前のもの)六五条一項の規定に基づき、右増差税額に一〇〇分の五の割合を乗じ(同法一一九条四項の規定により一〇〇円未満の端数切捨て)、それぞれ

昭和五四年分 一一万九五〇〇円

昭和五五年分 四万三一〇〇円

昭和五六年分 二一万七五〇〇円

と過少申告加算税を賦課決定したものであり、本件においては、同法六五条二項の「正当な理由」が存在しないから、本件過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

3  本件裁決の適法性について

(一) 被告審判所長は、国税通則法九七条に基づく調査、審理をし、同法九八条に基づき、昭和六〇年四月二日付けで裁決したのであって、本件裁決は、裁決をするに当たり必要な国税通則法上の手続を適法に踏んでなされた。

(二) 原告は、本件処分が違法であるから本件裁決も違法となる旨を主張するが、裁決取消しの訴えにおいて、原処分の違法を理由として、その取消しを求めることができないことは、行政事件訴訟法一〇条二項により明らかである。

五  被告らの主張に対する認否

1  被告らの主張1(一)のうち、(1)の事実は認めるが、(2)の事実は否認する。なお、本院のユニットは四台であり、また、原告は、連年多額の借金をしている。

2  同1(二)につき、(1)のうち、原告が、江苅内調査官らを一時間待ほど待たせ後、調査を実施することを了承したこと及び平井主査らが、綾部主査から原告の調査の了承を得たとの連絡を受けたことは否認するが、その余の事実は認める。(2)ないし(7)については、手続的保障原則により答える必要を認めない。(8)のうち、江苅内調査官が原告に対し調査結果を説明した事実は認めるが、その余の事実は否認する。(9)の事実は否認する。

3  同1(三)のうち、(1)の事実は認める。(2)のうち、米村係官が、昭和五七年一〇月二八日に関与税理士服部徹義に連絡し、同年一一月八日、九日、一〇日、二四日、二七日、一二月四日、二四日及び二八日の計八日間にわたって、原告の自宅及び分院に臨場して調査を行なった事実は認めるが、その余の事実については、手続的保障原則により答える必要を認めない。(3)についても、手続的保障原則により答える必要を認めない。

4  同2(一)の事実は否認する。

なお、原告は、本件税務調査に際し、調査方法に幾多の不法性があったにもかかわらず、調査に無条件で協力し、経営の実体を知る上で、帳簿以上に実在価値の高い原始資料を最大洩らさず提出し、調査に応じたのであって、実額計算できる状況にあり、推計課税は不当である。また、原告には、顕著な特殊事情として、東京及び上福岡にそれぞれ診療所を有し、一人で診療している事情があるが、被告税務署長が、推計に当たって当該事情を加味していない。これらの理由により、被告税務署長が主張する推計には全く合理性がない。

5  同2(二)について、(1)のうち、<1>及び<3>ないし<13>は否認し、<2>は、手続的保障原則により答える必要を認めない。(2)のうち、<2>ないし<4>は否認し、<1>は、手続的保障原則により答える必要を認めない。

6  同2(三)について、(1)のうち、<1>及び<3>ないし<11>は否認し、<2>は、手続的保障原則により答える必要を認めない。(2)の事実は否認する。

7  同2(四)について、(1)のうち、<1>及び<3>ないし<11>は否認し、<2>は、手続的保障原則により答える必要を認めない。(2)の事実は否認する。

8  同2(五)の事実は否認する。

9  同3の事実は否認する。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  本案前の主張について判断する。

国又は地方公共団体等の機関にすぎない行政庁は、民法上の権利能力が認められていないため、通常の民事訴訟では当事者能力を有しないが、行政訴訟においては、抗告訴訟その他の法定の場合に限り、当事者能力が認められているところ、被告らは、いずれも、国の機関である行政庁であり、本件訴えのうち、原告が被告らに対し金五〇〇〇万円の支払を求める部分は、行政庁に当事者能力が認められている右法定の場合に該当しないことが明らかである。そうすると、被告らは、右支払を求める部分については、当事者能力を有しないといわざるを得ない。したがって、本件訴えのうち、原告が被告らに対し金五〇〇〇万円の支払を求める訴えは、不適法である。

二  請求原因1(課税処分等の経緯)のうち、昭和五四年分、昭和五五年分及び昭和五六年分の確定申告、異議申立て及び審査請求の各税額を除き、その余の事実は、当事者間に争いがない。

三  原告は、本件処分に違法事由がある旨を主張するので、本件処分が適法であるかどうかにつき、以下において検討する。

1  本件処分に係る調査について

(一)  調査の経緯

(1) 原告が、東京都世田谷区所在の本院及び埼玉県上福岡市所在の分院において歯科医業を営んでいるところ、被告税務署長に対し、本件各年分の所得税につき、いわゆる白色申告をもって、前記のとおり、確定申告書を提出したことは、当事者間に争いがない。

(2) 証人綾部経一の証言によれば、原告提出に係る右確定申告書の内容やその他の資料等の分析結果に基づき、原告が世田谷税務署の所得税調査の対象に選ばれたが、原告については、前記のとおり、二箇所に診療所を有していながら、他の歯科医師と比較すると、収入が過少であるのみならず、仕入金額等が極端に高いため、所得金額及び所得率が非常に低いこと、毎年、マンションなどの多額な資産を取得しているところ、その取得資金の源泉を解明する必要が認められたこと、不動産所得の申告漏れが見込まれたことなどの事情により、多額の申告漏れがあると想定されたため、原告に対する世田谷税務署の所得税調査には、東京国税局直税部資料調査第二課が指導、応援することとなったことが認められる。

(3) 被告税務署長が、右認定のとおり、東京国税局直税部資料調査第二課の協力を得たうえ、原告の本件各年分の申告所得金額につき、世田谷税務署の江苅内調査官に対し調査を命じたこと、江苅内調査官、綾部主査及び井関実査官が、昭和五七年六月二日午前八時三〇分ころ、調査のため原告の自宅に臨場し、原告に面接して、原告に対する調査を行う旨を告げたところ、原告は、診療前に朝風呂に入る習慣であると述べ、江苅内調査官らを待たせた後、自宅応接室において、質問調査に応じたこと、平井主査、桧森調査官及び山口調査官は、同時刻に、原告の自宅に隣接する本院に臨場し、本院に勤務していた原告の従業員の大嶋昌子に対し質問調査を実施したことは、いずれも、当事者間に争いがない。

証人綾部経一及び証人桧森俊夫の各証言によれば、原告は、右のとおり朝風呂に入る習慣がある旨を述べて、綾部主査らを約一時間待たせた後、午前九時三〇分過ぎに、診療所における調査を含めて、税務調査に同意したこと、平井主査らは、右のとおり本院に臨場したが、綾部主査らが原告の右同意を得るまで待機し、当該同意を得た旨の連絡を受けた後に、調査に着手したことが認められる。

(4) 証人綾部経一、証人桧森俊夫及び証人森久保貴志の各証言、証人森久保貴志の証言により成立の認められる乙第一二号証及び証人桧森俊夫の証言により成立の認められる乙第一三号証(原本の存在については当事者間に争いがない。)並びに弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。

<1> 原告は、右税務調査の際、綾部主査らに対し、歯科医業に係る収入金額や必要経費に関する帳簿は備え付けていないとして、このような帳簿を提示せず、歯科医業に係る収入金額につき、社会保険診療報酬は、社会保険支払基金から発行される計算明細書に基づき計上し、自由診療収入は、カルテに記載してある診療報酬を計算して計上した旨を説明し、前記応接間に隣接する部屋に保管されていた本件カルテを提示した。綾部主査らが、本件カルテを検査したが、本件カルテは、本件各年毎に、かつ、本院・分院毎に、一括して、黒表紙を付して綴じられていた。本件カルテには、自由診療カルテ用紙と保険診療カルテ用紙の二種類の用紙が使用され、すべてペン書きで綺麗に記載されていた。また、本件カルテに記載されていた自由診療収入金額は、原告の申告に係る自由診療収入金額にほぼ一致した。

<2> 一方、前記のとおり本院において調査を行っていた平井主査は、本院に保管されていた昭和五七年一月から四月までの使用中カルテを前記応接室に運び、綾部主査らとともに検査したが、右使用中カルテには、すべて保険診療カルテ用紙が使用され、保険診療のみならず、自由診療についても記載がなされていた。また、その記載は、すべて、鉛筆書きで、カルテらしい雑然とした状況であり、さらに、「入」という診療代金を表すとみられる表示や領という領収証を発行したことを表すとみられる表示を付したものがあった。なお、同年五月分の使用中カルテも、調査時において、原告の妻がレセプト(診療報酬明細書)を作成するために使用中であったのを、桧森調査官が借り出して検査したが、右一月ないし四月分のカルテと同じ状態であった。桧森調査官らは、各自分担して、本件カルテ及び使用中カルテの内容を抜き書きする作業を実施した。

<3> 綾部主査らは、右のとおり、本件カルテと使用中カルテとが明らかに異なっていることから、原告がカルテを書き換えているのではないかと考え、この点につき、原告に質問した。これに対し、原告は、カルテの書換えを認め、その理由として、従業員が保険請求をする際、見易いようにするために書き換えている旨を述べたが、同年一月から四月までについても保険請求事務が既に終了しているにもかかわらず、当該期間に係る書換後のカルテが存在しないことから、綾部主査らは、原告の説明には納得することができなかった。また、綾部主査らは、原告に対し、本件各年分に係る書換前の原始カルテの提示を求めたが、原告は、これを破棄したとして提示しなかった。

<4> 前同日、分院における調査も計画されていたが、分院は休診日であったため、当該調査は中止となり、担当官らは、原告の歯科技工の取引先であるしん山セラミックにつき、その取引状況等を調査した。その結果、昭和五六年分の本件カルテから計算されたポーセレンの数が七六本であったのに対し、昭和五六年中に、しん山セラミックが原告に納入した、ポーセレンは、約一三〇本と推認された。

<5> 翌六月三日、平井主査、小松実査官及び桧森調査官らは、分院に赴き、調査を実施したが、分院において、本件各年分に係る鉛筆書きの原始カルテの一部が発見された。この原始カルテの内容は、前日、原告から提示のあった本件カルテには記載がないため、分院で発見された原始カルテに記載されていた自由診療収入は申告漏れとなっていることが判明し、その金額は、昭和五四年から同五六年までの三年間で、約一四五万円であった。

<6> 以上の税務調査の結果、原告の本件各年分に係る自由診療収入の金額は、実額で計算することができず、推計によらざるを得ないと判断され、江苅内調査官が原告に対し、右税務調査の結果を説明し、修正申告を慫慂したが、原告がその説明に納得せず、修正申告をしなかったため、被告税務署長は、原告の本件各年分に係る自由診療収入金額を推計によって算出し、これに基づき、本件処分を行った。

(5) 原告が被告税務署長に対し、昭和五七年一〇月五日、本件課税処分を不服として異議申立てをしたので、被告税務署長は、米村係官に対し、右異議申立てに係る調査審理を命じたこと、米村係官は、昭和五七年一〇月二八日に関与税理士服部徹義に連絡し、同年一一月八日、九日、一〇日、二四日、二七日、一二月四日、二四日及び二八日の計八日間にわたって、原告の自宅及び分院に臨場して調査を行ったことは、いずれも、当事者間に争いがない。

(6) 成立に争いのない甲第一〇号証によれば、原告が、右異議申立てに係る調査においても、本件カルテの原始カルテを提示しなかったため、被告税務署長は、推計によらざるを得ないと判断し、推計によって算出した収入金額に基づき、本件処分の内容を再検討し、本件処分を一部取り消す旨の異議決定を行ったことが認められる。

(二)  調査の適法性

(1) 原告は、まず、税務職員が、昭和五七年六月二日午前八時三〇分ころ、原告に何ら予告することなく、原告が最も慌ただしい時間帯を狙って襲撃したことが違法であると主張する。

そこで、判断すると、税務職員の質問検査の範囲、程度、時期、場所等実施の細目は、当該質問検査を行う必要性と相手方がこれにより受ける不利益との衡量において社会通念上相当な程度にとどまる限り、税務職員の合理的な選択に委ねられていると解すべきであるが、実施の日時、場所等を事前に相手方に通知するかどうかもまた、同様に、税務職員の合理的な裁量に委ねられていると解すべきである。本件についてみると、前記の調査の経緯、とりわけ、原告は本院及び分院において、歯科医業を営んでいるところ、多額の申告漏れが見込まれたこと、綾部主査らは、昭和五七年六月二日午前八時三〇分ころ、本院を兼ねる原告の自宅に赴き、原告に面接して、調査を行う旨を告げたこと、これに対し、原告は、診療前に朝風呂に入る習慣であると述べ、綾部主査らを約一時間待たせた後、質問検査に応じたことなどの事情に照らすと、本件質問検査の時期及び場所等は、社会通念上相当な程度として、税務職員の合理的な裁量の範囲内であると認められ、また、その時期や場所等を事前に原告に通知しなかったとしても、なお合理的な裁量の範囲を逸脱しているものではないというべきである。

(2) 次に、原告は、原告の承諾を得ることなく、また原告の立会いを得ることなく、原告不在のまま勝手に、税務職員が診療棟に侵入したと主張する。

しかし、前認定のとおり、原告は、綾部主査らに対し、診療所における調査を含めて、税務調査に同意し、診療所に臨場した平井主査らは、綾部主査らが原告の右同意を得るまで待機し、当該同意を得た旨の連絡を受けた後に、調査に着手したものであり、また、前記調査の経緯からは、原告は、診療所に隣接する自宅において調査に立会い、診療所では原告の従業員が調査に立ち会ったものと推認される。そうすると、原告の主張は理由がないといわざるを得ない。

(3) また、原告は、既申告関係外の調査当日の伝票などの書類を検査したことが違法であると主張する。

確かに、本件税務調査は、昭和五四年分ないし昭和五六年分の所得税について行われたものであるが、しかし、その検査の対象となる書類は当然に当該時期に係るものに限定されるわけではなく、あくまで、前記のとおり、税務職員の質問検査の範囲、程度等の問題として、当該質問検査を行う必要性と相手方がこれにより受ける不利益との衡量において社会通念上相当な程度にとどまる限り、税務職員の合理的な選択に委ねられていると解すべきである。本件においてみると、前記のとおり、昭和五四年ないし昭和五六年のカルテとして提示された本件カルテは、明らかに書き換えられた後のものであって、書換前の当初のカルテが破棄済として提示されず、かつ、原告が述べた当該書換えの理由も曖昧であったのであるから、税務職員が昭和五七年一月ないし五月の使用中カルテを検査したことは、当然のことであって、もとより、その合理的な裁量の範囲内であることはいうまでもない。また、カルテ以外の書類で、昭和五四年ないし昭和五六年に係るもの以外のものにつき、税務職員の合理的な裁量を逸脱して検査がされた事情も何ら窺うことはできない。

(4) 原告は、歯科医師の守秘義務に係る診療関係書類という不可侵書類を検査したことが違法であると主張する。

前記調査の経緯等に照らすと、原告がいう歯科医師の守秘義務に係る診療関係書類とは、具体的には、本件カルテ及び使用中カルテを指すものと思われる。しかし、これらのカルテが、歯科医師である原告の「事業に関する帳簿書類その他の物件」(所得税法二三四条)に該当することは明らかであって、本件において、前記のとおり、提示された本件カルテ等を税務職員が検査したことは適法である。

(5) さらに原告は、原告の従業員に対し質問調査したことが違法であると主張する。

しかしながら、税務職員は、税務調査に際し、その合理的な裁量に基づき、必要があると認めるときは、納税義務者の業務に従事する従業員に対しても質問することができるものと解すべきであり、本件においては、前記調査の経緯等に鑑みると、平井主査らが、本院に勤務していた原告の従業員である大嶋昌子に対し、質問調査を実施したことは、その合理的な裁量の範囲内のことであると認められ、適法である。

(6) 以上のとおり、税務職員の調査について原告が主張する違法事由は、いずれも理由がなく、本件における税務職員の調査は、前記調査の経緯等から明らかなように、すべて適法になされたものと認められる。

2  処分理由の事前開示について

原告は、原告が被告税務署長に対し、更正前に更正の理由の開示を求めたが、被告税務署長が当該理由を開示しなかったことが違法である旨を主張する

原告の主張は必ずしも明確ではないが、その趣旨が文字通り、被告税務署長に更正前に更正の理由を開示する義務があるという趣旨であるとすれば、更正前に更正の理由を開示するというようなことは背理であって、被告税務署長にこのような義務があるとは到底考えられず、原告の主張は失当である。あるいは、原告の主張は、被告税務署長が調査終了後、更正前に、当該調査の結果を原告に説明しなかったことが違法である趣旨ともみられないではないが、前記認定のとおり、税務調査終了後、江苅内調査官が原告に対し、当該税務調査の結果を説明し、修正申告を慫慂したが、原告がその説明に納得せず、修正申告をしなかったものであって、税務調査の結果の説明自体は行われたのであるから、やはり、原告の主張は理由がないといわざるを得ない。

3  処分理由の附記について

原告は、被告税務署長が原告に宛てた更正通知書に処分理由の附記がないという違法がある旨を主張する。

しかしながら、原告は、前記のとおり、いわゆる白色申告をもって、確定申告書を提出したのであるから、その更正には、当該処分の根拠となった理由を記載しなければならないとする法律上の規定はなく、その必要がないといわざるを得ない。そうすると、被告税務署長が原告に宛てた更正通知書に処分理由の附記がないとしても適法であって、原告の主張は失当である。

4  証拠資料の開示について

原告は、原告が更正の理由の正当性を根拠づける証拠資料の開示を要求したのに対し、被告税務署長が、開示を拒否し、また、理由なき更正であることを暴露したことが違法である旨を主張する。

まず、原告が更正の理由の正当性を根拠づける証拠資料の開示を要求した場合に、被告税務署長が、当該証拠資料を開示しなければならないとする法律上の規定はなく、被告税務署長が開示を拒否したとしても違法ではない。次に、被告税務署長が理由なき更正であることを暴露したという事実に沿う証拠はない。したがって、原告の主張は、いずれも理由がない。

5  推計の必要性及び合理性について

(一)  推計の必要性

前記認定の調査の経緯等の事実、とりわけ、

(1) 原告が、税務調査の際、税務職員に対し、歯科医業に係る収入金額や必要経費に関する帳簿は備え付けていないとして、このような帳簿を提示せず、自由診療収入は、カルテに記載してある診療報酬を計算して計上した旨を説明し、本件カルテを提示したこと

(2) 本件カルテは、本件各年毎に、かつ、本院・分院毎に、一括して綴じられ、自由診療カルテ用紙と保険診療カルテ用紙の二種類の用紙が使用され、すべてペン書きで綺麗に記載されていたところ、本件カルテに記載されていた自由診療収入金額は、原告の申告に係る自由診療収入金額にほぼ一致したこと

(3) 本院に保管されていた昭和五七年一月から五月までの使用中カルテには、すべて保険診療カルテ用紙が使用され、保険診療のみならず、自由診療についても記載がなされていたが、その記載は、すべて、鉛筆書きで、カルテらしい雑然とした状況であり、さらに、「入」という診療代金の入金を表すとみられる表示や領という領収証を発行したことを表すとみられる表示を付したものがあったこと

(4) 税務職員が、本件カルテと使用中カルテとが明らかに異なっていることから、原告がカルテを書き換えているのではないかと原告に質問したのに対し、原告は、従業員が保険請求をする際、見易いようにするために書き換えている旨を述べたが、保険請求事務が終了している同年一月から四月までについて書換後のカルテが存在しなかったこと

(5) 税務職員が、原告に対し、書換前の原始カルテの提示を求めたが、原告は、これを破棄したとして提示しなかったこと

(6) 分院での調査において、本件各年分に係る鉛筆書きの原始カルテの一部が発見され、この原始カルテの内容は、原告から提示のあった本件カルテには記載がなく、この原始カルテに記載されていた自由診療収入は申告漏れとなっていることが判明したこと

以上の事実に照らすと、原告の提示に係る本件カルテの内容の正確性について疑問を払拭することは極めて困難であり、原告は、書換前の原始カルテの提示を拒否し、その他本件各年分に係る診療収入の金額を実額で計算することを可能にする帳簿書類等を提示しなかったのであるから、原告の本件各年分に係る診療収入の金額は、実額で計算することができず、推計によらざるを得ないとした被告税務署長の判断は相当であって、推計の必要性があったことは明らかである。

原告は、本件税務調査に際し、調査に無条件で協力し、原始資料を細大洩らさず提供したのであるから、被告税務署長は、実額で計算することができる旨を主張するが、右のとおり、原告は、本件税務調査に十分協力したとはいいがたく、書換前の原始カルテの提示を拒否し、その他の帳簿書類等を提示しなかったものと認められるのであって、原告の主張は理由がない。

(二)  推計の合理性

証人安達繁の証言、これにより成立が認められる乙第一号証、第二号証の一ないし三、第三、第四号証及び第五号証の一ないし四(乙第一号証及び第四号証については原本の存在を含む。)並びに弁論の全趣旨を総合すれば、東京国税局長は、昭和六〇年一一月六日付けで、原告の本院を管轄する被告税務署長に対し、関東信越国税局長は、東京国税局長の依頼により、同月一一日付けで、原告の分院を管轄する川越税務署長に対し、それぞれ、本件各年分を対象年分とし、右各税務署管内において、事業所を有する者のうち、<1>歯科医師である者、<2>本件各年分につき、青色申告の承認を受けている者、<3>本件各年分の保険診療に係る収入金額及び外注等経費の金額のいずれもが、原告の当該金額の半分以上二倍以下の範囲内である者及び<4>年を通じて歯科医師の事業を継続している者のいずれにも該当し、ア災害等により経営状態が異常であると認められる者又はイ税務署長から更正又は決定処分を受けている者で、国税通則法又は行政事件訴訟法の規定による不服申立期間及び出訴期間の経過していない者並びに当該処分に対する不服申立て又は訴訟係属中である者のいずれにも該当しない比準同業者につき、売上金額、売上金額のうち保険診療に係る収入金額、外注等経費及び外注等経費率を報告するように求めたこと、右各税務署長は、右対象者の所得税青色申告決算書等に基づくなどして、右比準同業者を抽出し、右報告事項を調査したうえ、これを東京国税局長、関東信越国税局長に対してそれぞれ報告した(これをまとめたものが別表四の1ないし3である。)ことが認められる。

右事実に照らすと、本件訴訟において被告税務署長が採用した同業者比率法は、事業所が近接し事業規模が近似する同業者を信用できる資料に基づき公正・正確に抽出したものであり、その数も同業者の個別性を平均化するに足りるものであって、その外注等経費率の平均値に基づいて原告の総収入金額を算出する推計には合理性があるといってよい。なお、本件において外注等経費率とは、売上原価に外注費(技工料)を加えたもの、雑収入を含む売上金額に対する百分比であって、一般の場合の原価率に類似するものであり、同程度の規模の歯科医院であれば、この比率はおおむね一定範囲にとどまるものと考えられ、現に本件においては、前掲乙第二号証の一ないし三、同第五号証の一ないし四によれば、この外注等経費率は最低が一四・一八パーセント、最高が二三・四九パーセントであって、全体としてはほぼ二〇パーセント前後であることが認められるから、この外注等経費率の平均値に基づいて総収入金額を推計することには十分な合理性があるものということができる。

原告は、東京都世田谷区所在の本院と埼玉県上福岡市所在の分院の二つの診療所を原告一人で診療しているという特殊事情を加味していないから、右推計に合理性がないと主張するが、原告と全く同様に世田谷区と上福岡市に二つの診療所をもち、一人でこれらにおいて診療する歯科医師から相当数の同業者を抽出することは、社会通念上、期待しえないことというほかなく、前記認定のとおり、原告の本院を管轄する世田谷税務署の管内に事業所を有する者及び分院を管轄する川越税務署管内に事業所を有する者から同業者を抽出したことにより、原告がいう事情を斟酌した合理的な推計であるというべきであって、原告の主張は失当である。

6  原告の所得金額について

(一)  所得金額の計算根拠

いずれも成立に争いのない甲第一号証の一ないし五、第二号証の一ないし四及び第三号証の一ないし四、乙第六号証の一ないし六、第七号証の一ないし一一、第八号証の一ないし六、第九号証の一ないし九、第一〇号証の一ないし六及び第一一号証の一ないし一二(甲第一号証の一ないし五、第二号証の一ないし四及び第三号証の一ないし四については原本の存在を含む。)、証人安達繁の証言並びに弁論の全趣旨を総合すれば、前記被告らの主張2の(二)(昭和五四年分所得金額の計算根拠及び適法性)、(三)(昭和五五年分所得金額の計算根拠及び適法性)及び(四)(昭和五六年分所得金額の計算根拠及び適法性)記載の各事実は、いずれも、認めることができるところ、被告税務署長が加算、減算した内容、すなわち、

(1) 事業所得に関し、

<1> 売上原価につき、技工料を売上原価と区別して、外注費の項目に分類し、この技工料の額を売上原価の額から減算したこと

<2> 水道光熱費につき、本院に係る料金には、住宅での使用に係る家事使用分が含まれているにもかかわらず、原告は、本院に係る各料金について事業分と家事使用分とを区別せずに、その全額を必要経費に算入していたが、診療日数及び診療の対価のいずれについても分院の方が本院を大幅に上回っていることから、本院に係る水道光熱費は、分院に係る水道光熱費を上回るとは認められないため、本院に係る水道光熱費のうち、分院に係る水道光熱費の額を超える部分を家事使用分に係るものとみなし、事業上の必要経費には当たらないとして減算したこと

<3> 旅費通信費につき、本院に係る電話料金については、家事使用分が含まれているにもかかわらず、原告は、事業分と家事使用分とを区別せず、右電話料金の全額を必要経費に算入していたが、前項記載の事情を考慮し、電話料金についても、本院に係る料金のうち、分院に係る料金を超える部分を家事使用分に係るものとみなし、事業上の必要経費には当たらないとして減算したこと

<4> 接待交際費につき、個人の遊興又は個人生活上の接待等に係る支出と認められる部分を事業上の必要経費には当たらないとして減算したこと

<5> 書籍代につき、「原色版国宝」の購入代金を家事上の支出と認め、事業上の必要経費には当たらないとして減算したこと

<6> 雑費につき、前記特定の支出を、個人の生活上の支出に係るものと認め、事業上の必要経費には当たらないとして減算したこと

<7> 給料賃金につき、原告が、簿外で、宮本暢子らに対し、給与を支給していたため、これを給料賃金として加算したこと

<8> 利子割引料につき、本院は、原告の住宅兼診療所であるから、本院の敷地の取得及び本院の建築費に充てられた借入金のうち、床面積比率による計算上、住宅部分に対応する支払利子を家事関連費と認め、事業上の必要経費には当たらないとして減算し、また、不動産所得の基因となる資産であるストーク新宿九〇二号室の取得に充てられた借入金の支払利子の一部を、事業所得の必要経費には当たらないとして減算したこと

<9> 地代家賃につき、本院は、原告の住宅兼診療所であるから、住宅部分に相当する家事関連費の額を、事業上の必要経費に当たらないとして減算したこと

<10> 減価償却費につき、千葉市花園町所在の建物(貸診療所)の減価償却額を事業所得の必要経費には当たらないとして減算したこと

<11> 外注費につき、前記のとおり減算した外注費の額を加算したこと

<12> 返還金(雑損)につき、原告が、大島孝子に対し、返還した金額を事業上の雑損として加算したこと

(2) 不動産所得に関し、

<1> 家賃収入につき、パレドール原宿の販売提携業者から受け取った家賃相当額の保証を家賃収入に加算したこと

<2> 損害保険料につき、長期の損害保険契約に係る支払保険料で一括支払したものを、期間の経過に応じて、必要経費に算入することとし、保険料の一部を減算又は加算したこと

<3> 利子割引料につき、前記のとおり、事業所得の必要経費の計算上、利子割引料から除外したストーク新宿九〇二号室の取得費に充てられた借入金に対応する利子を不動産所得の必要経費として加算し、また、昭和五六年分に関し、確定申告時において、借入金利子の集計をする際、計算誤りをした額を減算し、パレドール原宿が昭和五六年九月以降、不動産貸付に係る業務の用に供されていたものとは認められないとして、借入金利子の一部を減算したこと

<4> 減価償却費につき、原告が昭和五四年分の確定申告時の減価償却費の計算において、計算を誤って過大に計上した部分を減算し、また、ニューステートメナー一一三四号室、パレドール原宿三〇六号室及びストーク新宿九〇二号室に係る減価償却費を、建物の取得価額と土地の取得価額との区分をし、建物の取得価額とされた価額を基にして計算し、算定された超過額を減算し、さらに、前記のとおり、事業所得の計算上必要経費から除外した貸診療所に係る減価償却費の額を不動産所得の必要経費として加算し、さらに、昭和五六年分に関し、前項記載の事情により、パレドール原宿に係るものの一部を減算したこと

<5> その他の経費につき、前記の事情により、パレドール原宿に係る管理料の一部を必要経費に当たらないとして減算したこと

以上の加算及び減算は、いずれも、相当なものとしてこれを是認することができる。

そうすると、原告の総所得金額は、被告税務署長が主張するとおり、昭和五四年分につき、二二一三万四一八八円、昭和五五年分につき、二五六三万一九四四円、昭和五六年分につき、一八〇一万四七五三円となる。

(二)  処分の適法性

原告は、本件処分には、原告の所得を過大に認定した違法がある旨を主張する。

しかしながら、昭和五四年分ないし昭和五六年分の本件各更正に係る総所得金額は、別表一の1記載のとおりであり、いずれも、右に認定した原告の総所得金額の範囲内であるから、本件各更正には原告の総所得金額を過大に認定した違法はなく、また、本件各更正を前提としてなされた本件各賦課決定にも違法はない(昭和五六年分の過少申告加算税額は二一万七六〇〇円になるところ、過少申告加算税の賦課決定は右の範囲内でされたものであるから適法である。)というべきであって、原告の主張は理由がない。

7  以上のとおり、本件処分については、原告が主張するような違法事由はなく、本件処分は適法になされたものと認められる。

四  原告は、本件裁決に違法事由がある旨を主張するので、本件裁決が適法であるかどうかにつき、検討する。

1  原処分の違法について

原告は、本件処分が手続上も、また内容においても違法であるから、本件裁決が違法となる旨を主張する。審査裁決については、当該審査裁決に固有の瑕疵が存するときに限り、その違法を理由として取消訴訟を提起することができるのであるから、本件処分が違法であるという理由により、本件裁決の取消訴訟を提起することは許されないものと解すべく、原告の主張は、失当である。なお、前記のとおり、本件処分は適法になされたものと認められるのであるから、いずれにせよ、原告の主張は、理由がない。

2  争点外事項の審査について

原告は、被告審判所長が、審査に当たり、原告・被告税務署長間では、必要経費につき、実額で算定すること及びその額自体に争いがないにもかかわらず、調査審査の範囲は必要経費の各支出項目の金額の適否に及ぶとし、更に事業所得の必要経費については推計による算定によるべきであるとして、本件裁決をしたが、これは、争点外事項について審査したもので、権限外のことであって、手続的保障原則に反し違法である旨を主張する。

しかしながら、被告審判所長による審査手続における審査の範囲は、原告の総所得金額に対する課税の当否を判断するのに必要な事項全般に及ぶものというべきであり、したがって、被告審判所長が、審査に当たり、原告・被告税務署長間では、必要経費につき争いがないにもかかわらず、事業所得の必要経費については推計による算定によるべきであるとして、本件裁決をしたとしても、違法でないというべきである。原告の主張は採用できない。

3  以上のとおり、本件裁決についても、原告が主張するような違法事由はなく、本件裁決は適法になされたものと認められる。

五  よって、原告が被告らに対し金五〇〇〇万円の支払を求める訴えは、不適法であるからこれを却下し、原告のその余の請求は、いずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宍戸達徳 裁判官 北澤晶 裁判官 小林昭彦)

別表一の1

課税処分経緯表

<省略>

別表一の2

課税処分経緯表

<省略>

別表二

1(昭和五四年分)

<省略>

2(昭和五五年分)

<省略>

3(昭和五六年分)

<省略>

別表三の1(昭和五四年分)

<省略>

別表三の2(昭和五五年分)

<省略>

別表三の3(昭和五六年分)

<省略>

別表四の1

比準同業者(昭和54年)

<省略>

別表四の2

比準同業者(昭和55年)

<省略>

別表四の3

比準同業者(昭和56年)

<省略>

別表五

〔事業所得〕 売上原価及び外注(技工)費の計算根拠

<省略>

別表六

〔事業所得〕水道光熱費の計算根拠

<省略>

(注)原告は、(ニ)の計欄の額について収支明細書に1,764,876円と記載しているが1,866,749円が正しい。

別表七

〔事業所得〕旅費通信費の計算根拠

<省略>

別表八

〔事業所得〕接待交際費のうち、必要経費に当たらないものの内訳表

<省略>

別表九の1

〔事業所得〕雑費のうち、必要経費に当たらないものの内訳表(昭和54年分)

<省略>

別表九の2

〔事業所得〕雑費のうち、必要経費に当たらないものの内訳表(昭和55年分)

<省略>

別表九の3

〔事業所得〕雑費のうち、必要経費に当たらないものの内訳表(昭和56年分)

<省略>

別表一〇

〔事業所得〕借入金の使途及び支払利子の内訳表

<省略>

別表一一

〔事業所得〕地代家賃の計算根拠

<省略>

別表一二の1(昭和五四年分)

<省略>

別表一二の2(昭和五五年分)

<省略>

別表一二の3(昭和五六年分)

<省略>

別表一三

〔不動産所得〕損害保険料のうち前払費用に当たるもの及び各年分の必要経費となる額の計算内訳表

<省略>

(注)ハの括弧書きは、昭和53年分の損害保険料となる額である。

別表一四の1

〔不動産所得〕昭和54年分減価償却費の内訳(原告の提出した収支明細書記載額)

<省略>

別表一四の2

〔不動産所得〕昭和55年分減価償却費の内訳(原告の提出した収支明細書記載額)

<省略>

(注) <9>は、原告の収支明細書の減価償却費の内訳に記載はないが、<9>の減価償却費の額を算入しなければ、原告の収支計算欄の額7,193,954円とはならない。

別表一四の3

〔不動産所得〕昭和56年分減価償却費の内訳(原告の提出した収支明細書記載額)

<省略>

(注) <9>は、原告の収支明細書の減価償却費の内訳に記載はないが、<9>の減価償却費の額を算入しなければ、原告の収支計算欄の額6,317,036円とはならない。

別表一五

マンションの建物の取得価額の計算明細

<省略>

(注)原告が取得したマンションはいずれも購入価額(イ)に占める建物の価額が明らかでないので、その区分する方法として土地及び建物の固定資産税額の割合によって、土地と建物の価額を区分した。

別表一六

マンションに係る減価償却費の内訳

昭和54年分

<省略>

(注1)ニューステートメナー及びパレドール原宿は昭和54年1月から賃貸の用に供されている。

(注2)2,637,580円-1,949,784円=687,796円

昭和55年分

<省略>

(注)2,875,552円-2,057,790円=817,762円

昭和56年分

<省略>

(注1)パレドール原宿の償却額欄の( )内の数字は家事関連費とされた償却額を含む。

(注2)2,766,281円-1,708,161円=1,058,120円

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